アプリケーション

高温試験

アプリケーションの概要

温度は、あらゆる物質の性質を変化させます。水が氷になったり蒸気になったり、硬い鋼が柔らかくなったりするのも温度によるものです。

材料が高温環境下でどう振る舞うかを理解するには、実際にその温度で性能を調べる必要があります。しかし、このような試験は、スケールが小さくなるほど、温度のムラや熱膨張が原因で非常に難しくなります。

FemtoTools のシステムは、高精度な MEMS ヒーターを使って、迅速な温度調整と熱制御を実現し、この課題を克服しました。これにより、800℃ までの高温でも安定した測定が可能になり、走査型電子顕微微鏡（SEM）内で「in-situ 観察」を行うこともできます。

この重要な応用技術により、相転移、脆性-延性遷移、クリープ、脆化といった、高温下で起こるさまざまな材料現象を詳細に解明できます。

800°C で実施されているその場 SEM ナノインデンテーション試験。極端な条件下での材料試験を強調しています。

アプリケーション事例

マイクロピラー圧縮

高温下 in-situ SEM マイクロ圧縮試験

マイクロ圧縮試験は、材料の単軸強度を直接測定できるシンプルかつ優れた方法です。この試験を実際の使用環境に近い温度で行うことで、高温下での機械的挙動を信頼性の高いデータに基づいて把握できます。

本事例では、リソグラフィ技術で作製したシリコン製の柱状サンプルを高温で圧縮し、脆性-延性遷移について研究しました。走査型電子顕微鏡（SEM）の in-situ 観察動画が示すように、200℃ を超える温度では、本来「脆い」はずのシリコンの柱に、かなりの塑性変形が観察されました。

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銀の高温マイクロ引張試験

引張試験は、材料の機械的性能を示す重要な指標である「延性」を評価する上で最も信頼性の高い手法です。しかし、マイクロスケールでの引張試験には特有の難しさがあります。それは、試験片の形状が比較的複雑なことや、転位の不連続な動きによる急激な負荷変動を防ぐための高度な変位制御が必要なためです。

スイス連邦工科大学ローザンヌ校（EPFL）のMortensen 教授の研究グループが、これらの課題を解決しました。本事例で彼らは、マイクロキャスティング技術を用いて多数のサンプルを作製し、オックスフォード・インストゥルメンツ社のナノインデンテーション高温モジュールを使用することで課題を克服しました。これにより、温度を変化させながら銀の引張挙動と不連続な塑性変形を詳細に調べることが可能になりました。

シリコンのマイクロせん断

シリコンの高温マイクロせん断試験

シリコンは本当に脆い材料なのでしょうか？答えは「常にそうとは限りません」。あらゆる物質の性質は温度によって変わる可能性があるからです。

シリコンは、高温になると転位のメカニズムや速度が変化するため、脆性-延性遷移を起こします。ただし、この遷移が起こる温度は、引張、圧縮、せん断といった荷重の種類によって異なります。

本事例では、チューリッヒ工科大学ナノ金属研究室との共同研究で得られたものです。結晶方位が[110]に配向したシリコンを、600℃ の温度で、その主要なすべり面上で直接せん断しています。

SEM 内での高温 in-situ 観察で得られたスペックルパターン（微細な模様）とデジタル画像相関法（DIC）を用いることで、色の付いたひずみマップを作成しました。これにより、せん断帯内の局所的なひずみを直接測定することが可能です。