アプリケーション

マイクロカンチレバー破断試験

アプリケーションの概要

破壊靭性は、多くの工学分野で重要な材料特性です。微小なスケールで破壊実験を行うことで、材料全体の耐亀裂性に対して、特定の微細構造がどう影響するかを個別に測定できます。

この試験は、マイクロカンチレバー破壊試験によって行います。これは、リソグラフィーや集束イオンビーム（FIB）を使って精密に加工した「ノッチ付き片持ち梁」に圧縮力を加えて、き裂を発生させる方法です。

試験中、連続剛性測定や in-situ SEM 観察を用いると、き裂の進展を直接監視できます。これにより、特定の微細構造におけるき裂の発生メカニズムについて、貴重な知見を得ることが可能になります。

アプリケーション事例

破壊靭性

破壊靭性：J- 積分法

$SEM image of a notched micro-cantilever beam for fracture toughness testing and resulting Force-Displacement and J-integral curves$

脆い材料が破壊される際の破壊靭性 (K1C) は、最大荷重がかかったときの応力拡大係数 (K) から算出されます。この試験では、材料が降伏（変形）し始めたときに予期せぬ大きな力がかかり試験片がすぐに壊れてしまわないよう、変位を正確に制御することが非常に重要です。この制御により、従来の荷重制御システムで起こりがちなき裂が急激に進展して試験片が突然破壊するリスクを減らすことができます。

一方、靭性が高い（粘り強い）材料には、弾塑性破壊力学の考え方が必要です。ここでは J-積分が主要な指標となり、き裂進展抵抗曲線（J-R曲線）や弾塑性破壊靭性 (J1C)の評価に役立ちます。

本事例では、連続剛性測定（CSM）を用いたマイクロカンチレバー曲げ試験によってき裂の長さの変化を常に監視し、定期的な除荷区間を利用して連続的な J-積分を測定しています。一般的に、K1C や J1C の値が高いほど、あるいはJ-R 曲線の傾きが急であるほど、その材料がき裂の進展に強く抵抗することを示します。

界面結合強度

鉄とシリカ介在物の界面結合強度

製鋼プロセスでは、沸き立ちを防ぐためにケイ素（Si）、アルミニウム（Al）、カルシウム（Ca）、マンガン（Mn）といった元素が添加されます。しかし、冷却中に様々な非金属介在物（NMI）が形成され、合金の特性に影響を与えることがあります。これらの酸化物介在物は通常、望ましくないものとされていますが、「介在物工学」という分野では、その避けられない存在を利点に変える研究が進められています。

本応用事例では、in-situ SEM マイクロカンチレバー曲げ試験を用いて、鉄とシリカ介在物の界面強度を測定しました。その結果、シリカ介在物が常温における鉄系合金の機械的特性を損なうものではないことが示唆されました。