相関機械顕微鏡法

粒子の異方性

金属やセラミックのような多結晶材料は微細な結晶粒子で構成されており、その特性は粒子の向き（結晶方位）によって異なる場合が多くなっています。これを粒子の異方性と呼びます。

EBSD（電子回折分析）を用いた相関機械顕微鏡法は、この異方性が局所的な機械的特性に与える影響を理解するのに最適なツールです。

本例では、市販の純チタンが非常に高い異方性を示していることがわかります。隣接する粒子間で機械的特性が 2 倍以上も異なる場合があるのです。これは、鍛造技術が結晶集合組織を制御し、強度を向上させる高い潜在能力を秘めていることを示しています。

組み合わせ相分離

非常に似た、あるいは重なり合う特性を持つ複数の相が混在する材料から、それぞれの相の特性を分離して抽出することは非常に困難です。統計的な手法やクラスタリング手法ではこれらを単一の相と見なしてしまうことがよくあります。EDS を用いた相関機械顕微鏡法は、この問題を解決します。

本事例では、Ni-Ta 拡散対をコンビナトリアルライブラリとして用いて、幅広い組成の Ni-Ta 合金と金属間化合物を調査しました。これらの相の中には特性が重なり合うものがいくつか存在しますが、組成範囲は明確に異なります。ナノインデンテーション・マッピングと相関 EDS を組み合わせることで、すべての相を簡単に識別することが可能になります。詳細は「Small Methods 6 (2022) 2101084」をご覧ください。

未知の相関を探る

隕石は文字通り地球外の微細構造を持っています。極度の衝撃と非常に遅い冷却速度を経て形成された、まさに未知の材料です。これらの複雑な材料をより深く理解するためには、相関機械顕微鏡法が不可欠です。この手法は、構造・組成・機械的特性の関係を解明するのに役立ちます。

本事例では、シベリアの僻地で回収されたセイムチャン隕石の断片を分析しました。その内部に含まれる様々な相と組成勾配を調べるために、探針を当てて測定しました。相関機械顕微鏡法を用いることで、様々な相の組成、結晶構造、結晶方位が容易に明らかになりました。

積層造形（AM）の微細構造を理解する

積層造形（アディティブ・マニュファクチャリング）技術は、複雑な 3D 形状の部品や、これまでにない微細構造を持つ部品を簡単に製造することができるため、現代の製造業に革新をもたらしています。相関機械顕微鏡法は、こうした微細構造と機械的性能の関係を解明する上で非常に役立ちます。

本事例では、レーザー粉末床溶融結合法（L-PBF）で製造された 316L ステンレス鋼の「魚の鱗状（fish-scale）」微細構造について、その機械的特性と粒子の配向関係の両面から明らかにしています。

表面処理

窒化処理は、鋼の表面を硬化させるための一般的な表面処理です。窒素は炭素と同様に鋼を硬くする効果がありながら、延性の低下が少ないという利点があります。相関機械顕微鏡法を用いることで、窒化処理が及ぶ有効な深さや、異なる窒化物の相がどのように生成されるかを特定できます。

本事例では、ガス窒化処理によって表面硬化された 31CrMoV9 鋼（1.8519）を調査しました。得られた微細構造マップの傾向は、金属組織学的な観察や EDS による窒素濃度測定結果と非常によく一致しています。また、機械的な顕微鏡法を用いることで、ガス窒化された鋼の表面にある白色層内に両方の相が存在すること、そして窒化された表面とフェライト基板との間に機械的特性の勾配があることを明らかにすることに成功しました。